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わたしのブログ

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続きです。

五月に入った頃、黄河を工兵が造った仮橋を、一時間暗いかかって渡った。
向こうの岸に行ったら、中国兵が、あっちこっちに死んでいた。我が工兵が、橋を造るのに抵抗した中国兵を山砲でやっつけたそうだ。臓物を出して死んでいる者も相当見えた。また、雨と風に会った酷い地獄行軍、私も相当参ってきた。軍全体も同じであろう。

各班に、無教養で、営倉を食って、何年たっても進級も除隊も出来ない兵隊ゴロ、各隊にたらいまわしされ「ヒネクレ)万年一等兵、この野郎共が二、三人組んで、私的命令を出して新兵を苦しめる。・・・・軍人に賜る勅語・・・・
の一節に、上官の命は直ちに朕の命と心得云々と、書かれている所を悪用するので困る。この一節に、但し書きを付け、ただし、私的命令を出した上官は、厳罰に処す。とかをつければよかったと思う。
 私もこの野郎どもに、だいぶ悩まされた。私は同じ初年兵でも年を食っていてこけおどしくらいでは驚かないので、奴らもちっつと戸惑って、半分あきらめているようだった。今度来た補充兵は気合を入れても駄目だ。参ったな・・こんな事を言ってぼやいていた。
ザマァ見ろと足した地は皆で笑って「ピンタがなんだ、殺しはしねえょ。」と言っている間も無く星を一つくれた。
 本日をもって、一等兵を命ぜられました。と中隊長以下各位に申告した。今考えれば、これが私の運の付き始めだった。




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